雪列車
藤鈴呼



バレンタインの夜
列車は 走り続けてた

妄想と 現実と 追憶の彼方に揺れて
ガタタン ゴトトン

あの頃よりも かなり重たくなった身体ごと
何処かに運んでくれそうな雰囲気

静かに流れる時間の中で
立ち止まって考える時みたいに

考えたいのだけれど 思考停止して
雪のような涙が ツイッと流れる瞬間みたいに

どれが本当か 分からないけれど
どれが嘘かも 分からないから

何を信じても 良いんだ
そんな 気がした

見せて居なかった部分を 知られたからと言って
もう一度 殻に戻る 必要なんて無くて

ただ その 
短かった時間の奥側から

取り出せば良い
昔の歌を

苛立っても 哀しんでも
戻って来ない タイムカプセルを 眺めながら
トラウマなのだと 君が 言った

音も無く進むレールの向こうには
とてもキレイな雪景色
だけど それは 幻想風景だって 知ってるよ

ラッセル車を 総動員しても
何時間も 走り出せぬ 冬の線路を
僕は 知ってる

車窓が ホワイトアウトして
なんにも 見えぬ ことも

其処には 美しい 過去の情景など
一切 存在しない

風の音だけが 響くんだ


自由詩 雪列車 Copyright 藤鈴呼 2014-10-09 08:03:50
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