ぼくの歴史も燃えてしまったように思えた
天野茂典

  
   枯れた草むらに
   寝転がるようなことはしないで
   ライターで火をつけてみた
   なかなか燃えない
   新聞紙がない
   紙屑がない
   諦めた
   炎は美しい
   燃えることは楽しい
   この草むらいっぱい
   火の海にして
   佇んでいたい
   愉快犯ではない
   放火魔でもない
   炎の芸術を楽しむ
   アーチストとしてだ
   
   ぼくの家が火事になったとき
   火は外へ出なかったという
   燻製のように家中を焦がしていたのだ
   もう4年たつ

   ぼくは狂って
   消防署に電話して
   火事の予告をくりかえし
   これ以上しつこいと
   警察に届けるといわれたそうだ

   火事は怖い
   まさか自分の家が燃えるなんて
   ぼくの歴史も燃えてしまったように思えた

   この草むらならいい
   ぼくの中の右脳の草むら
   ペンキのように
   火山のように
   血の池地獄に
   燃やすのだ
   
   着火

   右脳はどう応じるだろう



              2005・01・29    


未詩・独白 ぼくの歴史も燃えてしまったように思えた Copyright 天野茂典 2005-01-29 17:36:07
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