秋になっても渡り鳥は渡らなかった。
komasen333

終わりを予感したのだろうか。
秋になっても渡り鳥は渡っていこうとしなかった。



9月を過ぎると思い出すよ。
あの頃のあの君を。



響いてくれ、響かないでくれ
繰り返してばかりいたあまのじゃく。



届いてくれ、届かないでくれ
素直になることができなかったぶっきらぼう。



あの頃のあの君にもう一度会えたら
あの頃のあの君ともう一度話せたら
叶わないことを思い浮かべる10月の始め。



変わりゆく街並みの中で
自分だけが変われていないような虚無感。



移りゆく人並みの中で
自分だけが止まっているような寂寥感。



あの頃のあの君が年々眩しくなっていくから厄介。
あの頃のあの僕が年々濃くなっていくから厄介。



後に残ったのは大きな大きな後悔だけだった。
予感していたんじゃないのか?
うっすらとこんな後悔に包まれること。
なのにこうして決めてきた
こうやって繰り返してきた
その積み重ねが今じゃないのか?
どうなんだ、自分よ。



始まりを諦めたのだろうか。
秋になっても渡らなかった渡り鳥は
結局、渡ることなく冬を越えた。


自由詩 秋になっても渡り鳥は渡らなかった。 Copyright komasen333 2014-10-03 13:59:39
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