窓際の破片
藤鈴呼



反射鏡の こちら側から見た世界は
鋭角に 歪んで

鏡台に 腰掛けた私は
危うく 転がり落ちた

睫毛に描いた 何時かの思い出も
米粒に写経した 文字の如く
判別出来なくて

困りながら 歩き始めた
粉雪だらけの道

未来など 何処に有るのかと
存在すらも否定し

歪むテーブルを 見定めた翡翠と
紅き花びらに 酔いしれる

立て 今からお前の真実を
探しに出掛けるのだ

そんなモノは 何処にも存在しないと
雪の中から 声がする

振り返っても 灯篭に照らされた朧月にしか
見えぬのだから

路頭に迷う筈だと 
知っていた筈だろう

喰い留められなかった 
破片ばかりが

今も ゆっくりと 漂う
凍ることも 忘れた ままで


自由詩 窓際の破片 Copyright 藤鈴呼 2014-09-25 21:42:44
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