自由と名付けられた駅
松岡宮

その
自由と名付けられた駅は
いつも不自由そうに縮こまって
狭いホームにたくさんの人を載せていた
東横線の急行を待ち合わせるとき
スイート・スイーツ・スイっと抜けて
女神がいつも見張っている
記念日には綺麗な明かりに包まれる駅
自由というのは誰かに見せるためのアクセサリーみたいね
だからこの駅の乗客はとても礼儀正しいのね
駅員が「お座り」と言えば
乗客はみな座りはじめる
何しろここは女神の守る駅ですから
女神がうなづく
さてそんな自由な駅に最近ホーム柵が出来た
ホーム柵は駅員の分身のようなもの
だから駅員はその柵を柵太郎と名付けた
乗客たちは柵太郎の仕事の邪魔をせぬよう歩くことで相変わらず自由を謳歌した
ああ 自由っていいなあ
ああ 自由って素晴らしいなあ
狭いホームで闊歩するのは
ゴティバ・ゴテゴテ・バレンタイン!
両端を鉄の物体に囲まれた自由が
柵太郎にも囲まれはじめた自由が
2列に整列しながらキラキラ輝きはじめる
<みてくれ、この、まばゆいばかりの、自由を、みてくれ>
その
自由と名付けられた駅はいつもどおり恥ずかしそうに縮こまって
古い駅なものでバリアフリーが遅くなってごめんなさいね
などと
なぜか女神に謝罪している


自由詩 自由と名付けられた駅 Copyright 松岡宮 2014-09-21 21:01:33
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