傷を隠す
藤鈴呼



昔 泥棒扱いを された 
後年になり 真偽を問うも 

その時の 思いを
紐解くことは 難しい

やはり その時々で 
解決しなければならぬ 問題は
多いのかと 実感した

一つ 皮膚が めくれた
額に 皺が 刻まれた

少しの 苛立ちが 募った
こういう時は 考え方を 180度
転換してみるモンだ

クルクルと回る ブランコに
キコキコ揺られ 考えてみた

恐らく 先方が 
何かしらの郷愁に 包まれて
発した台詞 だったのだろう 

なんて思うと 少しだけ怒りが 
スッと 遠のいて くれるだろうか

その行先に 吹きかけた息が
粋に輝く手前で 波に 呑まれる

北風は 思う以上に 冷たいらしい

お前は 泥棒だ
お前が 盗んだんだ
お前だろう?

気難しい 顔をした我の
傷が 一つ 消えた
笑い皺が 消えて しまった

盗んだ 何かは
パスタソースと 和えて
食べて しまえ

フォークで 刺した 果物が
柔らかすぎたから
ちょっと失敗って
えへへと 笑う

ねえ 茹で時間が 分からないの
今夜は クリーム・パスタ

隠した傷と もう一つ
何を 絡めましょうか


自由詩 傷を隠す Copyright 藤鈴呼 2014-09-19 19:00:09
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