魅惑のムール貝
藤鈴呼



閉じたり 開いたり
貝殻 カララ

真空管の 声がする

カラカラの 頭の中を
巡り 巡って 焦った喉が
カラカラと 哭く

透明な 真空パック
野菜を 封じ込める
便利グッズ

少し 盛り上がった 白菜を
冷蔵庫に 隠す

豚コマと 一緒に
本だしで 煮込んでしまおうか

ぽろん ぽろん
乾いた太鼓を 叩くような
不思議な音が 響く 夕刻

空っ風の中で けなげに飛ぶは
ホッチキス

何を 綴じたら 良いのかと
考えながら
真っ先に 閉じるのは 瞳

毎晩の 仕草も
交わす 台詞も
お決まりの 
解決策は 見えないの

そんな筈は無いわと言って
羽根を 翻した鳥が
ムール貝の 宿に 帰る

パカッ と 玄関が空けば
吸い込まれて 眠るのでしょう

お部屋は めためたの 
貝殻じゅうたん

切っ先が 鋭くったって 大丈夫
きっと 安眠 出来ますよ


自由詩 魅惑のムール貝 Copyright 藤鈴呼 2014-08-29 20:58:46
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