「行方不明者の捜索が続く現場で、声を上げて泣き崩れる女性」と題された報道写真
komasen333



「家族、身近な人 土砂にのまれ…」
2014/8/22 朝刊 中日新聞


--------------------------------------------------------------------------------

慌てて駆け出してきた黄色いサンダル
泥にまみれたぐしゃぐしゃな全景
黄色い立ち入り禁止線
境界線の向こうで
捜索や片づけに奮闘するヘルメットの数々
その手前で長い髪を垂らし、しゃがみ込んだまま


止めどない涙と収まらない心象
うつむき、悲哀に染まるばかり


なんて言葉をかければいいのか
こんな時、なんて言葉をかければいいのか


どの選択肢も心もとなく
浮かんでは消え
浮かんでは消え
寄り添えない
包み込めない無力さにうちひしがれる


言葉が降ってこない
言葉が湧いてこない
言葉が詩にならない


こんな時に限って
無難な当たり障りのない
言っても言わなくても
どちらでもいいような言葉しか


顔も知らない
名前も知らない
瓦礫の前でしゃがみこむ女性
その姿を写した報道写真


丸まった背中にかけたい言葉は
その背中にかけるべき毛布のような詩は
考えても考えてもまとまらない


今はまだ
思い浮かぶ言葉のすべてが嘘臭い
どうしようもないくらい、しっくりとこない。


自由詩 「行方不明者の捜索が続く現場で、声を上げて泣き崩れる女性」と題された報道写真 Copyright komasen333 2014-08-29 14:53:23
notebook Home 戻る  過去 未来