ねこかぶり
藤鈴呼



あなた の そとがわ は
気前の良い 人間だけれど
わたしは 知ってるの
内側に住む にゃんこ性質

一枚ずつ 薄皮を
ぺりっ と 剥ぐように
朝の 薄氷で
コテッ と 滑るように

ひとにゃん ふたにゃん
脱いで みましょうか

先ずは 三毛猫
にゃんこの 王道
か どうかは わからにゃいが
アメショーの 雑種なんて
いかがでしょうか

続きましたる ペルシャ猫
白いベンチが 似合います
窓辺と カーテン そよぐ風
涼しい顔で 見つめます

そして 黒猫
みんなに 嫌われ 可哀相
私は あなたを 愛してる
ブラック・キャットは
ミュウの イメージ・キャラクター

真っ白く 細いニャンコが
冬の 小道で 丸まってたら
要注意

タイヤを そのまま 転がせば
雪玉と 勘違いして
殺めて しまいますよ

一番 要らぬ キャラクターから
殺めてしまえ
こんな わたし あんな あなた
どんな わたしたち?

嗚呼 でも
思い出したわ
猫被りでは 足りぬ 事実に
アタシ 寅年 だったもの
やっぱり 猫じゃあ 足りないの

あなた 猫 かぶってるわね
わたし 虎 かぶっているの

だから 二人は 被らない
永遠に 分かりあうこと 知らぬけど

あなたが 猫を ひとにゃん 脱げば
わたしは 牙で ぎゃあ と 啼く

噛み付いたりは しませんヨ
ベンガルだって わきまえている

飛び付いた 瞬間に
殺されて しまうのですから

ひとにゃん ふたにゃん
可愛い角度で 
喉を鳴らして 甘えます

撫ぜる手の
温かさだけ 憶えたら
今度は 優勢
あなたは 雄性
わたしは 郵政民営化

駐車場の 白い雪が
猫の形に 固まって
中まで 入れないの

どんな牙を もってしても
スコップみたいに 掻き出せぬから
雪は 雪
雨みたいには 流れない

絶対に 流されないの

そう 呟いて
邪魔な 着ぐるみ 脱ごうとしたけど
寅年だから 脱げないの
永遠に


自由詩 ねこかぶり Copyright 藤鈴呼 2014-08-25 22:22:19
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