国道9号線を走った
馬野ミキ

松田さんが死んだ
白兎駅でソアラをシャコタンにしようとしていて
車に押し潰されて死んだ
倉吉で暴走族を立ち上げようとしている時で
関西から帰って来られた先輩が何人かおられた
松田さんはその1人だった
その死はあっけなかった

翌日俺たちはカラオケで馬鹿騒ぎをしていた
俺はもっとも後輩の部類に位置しパシリ的な存在であった
東京から帰ってきた俺は荒れていた
酒を飲んで電話ボックスを壊したりタクシーを蹴ったり
ミキに酒を飲ませろ 何でもするから
ミキあの女をナンパしてこい はいわかりました!

右肩に刺青を入れた
Yさんの家で皆互いに刺青を入れあった
大人の歓楽街という刺青を足に入れている人もいた
時々知らない女が隣の部屋で泣いていた

松田さんとはそれ程親しくなかったが
俺はトイレに行くと言ってカラオケボックスを飛び出し
白兎駅に向かって国道9号線を走った
じきに先輩たちの車が追いかけてきて俺を見つけてくれた

ミキ どこに行くんだ!
松田さんの声が聞こえます!
俺は嘘をついた
そんな声は聞こえない
ただカラオケで馬鹿騒ぎしている自分たちがいやだったのだ
俺はY先輩の胸で泣いた
Y先輩はミキ泣くな!と怒った

翌日、同級のKが「本当に松田さんの声が聞こえたのか?」と俺に問いただした
Kと俺はこの暴走族の最低学年の二人の道化としてグループを支えていた
俺は「うん、聞こえた」と言った。


自由詩 国道9号線を走った Copyright 馬野ミキ 2014-08-06 16:48:30
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