ハセの頭を割った
馬野ミキ

ハセ(長谷川)と俺はお互い母子家庭だったので
学校が終わって親のいない家をお互い自由気ままに支配しあったりした
インスタントラーメンを茹でずに
付属の粉をかけてベビースターラーメンのように食べることは
ハセに教わった
ハセが、今日が何月何日かしらないということに
割りと早熟であった俺は衝撃をおぼえた
ああ 今日が何月何日かしらない選択肢というのもあるのだなと・・

ある時ハセと山にカブトムシを取りに行った
俺は小学一年の文集に昆虫博士になりたいと書くほど昆虫が好きだったので
カナブンなども捕まえていた
ハセは、カナブンは譲ってるからカブトムシは俺にくれよというようなことを言った
ハセはミーハーだからカナブンに興味はないくせに
と俺は思っていた
だいいち、カブトムシなんていないだろう

近くに精神病院が有り基地外を連れて行くと5000円もらえるという
都市伝説ならぬ田舎の伝説があった
今考えるとたわいもない噂だが当時小学生の間でそれは少し信じられていた
山の中に隔離病棟があり、窓をドンドン叩いて外に出たがっていたおばあさんを俺も見たことはある
あのおばあさんは俺の空想だっただろうか
わからない

病院の生ごみを捨てる大きな穴が山に掘られていた
近くにパワーショベルがあった
ハセはカブトだ!と叫んで穴に降りた
一匹のカブトムシがスイカを吸っていた
俺は近くにあった竹の切り株をハセの頭に投げつけた
ハセの頭はパックリと割れ血が吹き出した
カブトムシがその後どうなったかは忘れたが
俺はハセの流れ続ける血を拭い自分の頭にもなすりつけながら
二人で山をおりた。


自由詩 ハセの頭を割った Copyright 馬野ミキ 2014-08-06 10:19:43
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