姉さん女房に捧ぐばらっど
服部 剛

ふだんは優しい女房が
時折、般若の顔になり
言葉の弾丸は
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
柳のような面影で
げっそりとした
僕の髪を靡かせ
遠い彼方へ通過してゆく

「うん、うん、そうだな…」と頷きつつも
(男はつらい…)とうつむきつつも
少し離れた公園に散歩して避難して
よーく考えりゃぁ
詩人なんぞを志す薄給の夫を掌の上で泳がす
姉さん女房に(やっぱり頭があがらんわ…)

そうしてようやっと感謝の念はじわり…湧き
木の葉を揺らすそよ風は胸にひりり…吹き

なんとかふんばって支えてくれる
女房だって、人間ひとであるゆえ
時折疲れちゃった日は
(さんどばっくを買って出よう!)

そんな妙な勇気に、僕は
公園のベンチから立ち上がるのです

そうして再び公園の木々の葉を
風は吹き過ぎ――僕は思う

百の言葉の弾丸が過ぎた後
旦那と女房の間に残る
食卓の
静寂しじまについて  







自由詩 姉さん女房に捧ぐばらっど Copyright 服部 剛 2014-08-04 23:46:08
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