四度目の上京
馬野ミキ

高校をやめ
好き勝手言って田舎を飛び出した手前
東京に敗北し帰郷した俺はすぐに地元のハローワークで仕事を見つけた
ギターを押し入れで風化させたまま
12時間交代の工場に勤務し
Windows98搭載パソコンを買って
おっぱい詩人の部屋というホームページを作ったり
鳴り物入りでデビューしたMMOウルティマオンラインにハマっていた

工場ではコネクタを作る機械のオペレーターをしていた
業界において世界七位の企業だという
聞いたこともない
休憩時間になっても休憩しない一つ下の元ヤンの女の子に「休憩時間だよ」と教えてあげたが
じゃあ俺は何をしていたのだろう
お互い休憩室にいづらいのだ
たまに孤立していた新工場長と幾度か昼飯を共にした
品質向上スローガンの募集で俺の文学的才能を知らしめようとしたが箸にもソードにもひっかからなかった

やがて夜勤で言うことを聞かない機械を蹴るようになり
工場に行かなくなった
班長が俺を居酒屋に連れて行き慰めた
最後に明日から工場こいよ!と言って俺の肩を叩いた
俺は「はひ」と言って次の日も仕事を休んだ
自転車で河原に行き気持ちよかった

長野のスノーボードの大会で怪我をした弟が帰ってきていた
母と三人でレストランに行った
母は俺が工場を辞めたことを責めなかった
俺は少し救われたと思った
弟と三国志を24時間して負けた

母は俺を外に連れ出そうとしていた
ウォーキング、日本海のイカ釣り漁船見学、親戚がやっているヨガ教室
俺は常々いたたまれない気持ちであった
心配した東京の彼女が送ってくれたプレイステーションを売って酒代にし
偶然であった元同級生と近所の高校の更衣室に忍び込んでセックスをしていた
コンクリートの上でセックスをすると膝が痛いものだ
セックスをし終えた後校庭の照明をつけたりした
夜の学校を支配している気持ちだ
蛍が飛んでいた
駅前でワンカップを叩き割りタクシーの運転手に詰め寄れられた
交番からおまわりさんが飛んできた
強制的にどこかに連れて行かれることは気持ちがいい リラックスできる
もう葛藤しなくて済むからだ
沖縄のペンションに行って枕カバーを枕にしまう仕事を迅速にできず一日で帰ってきた
母の同級生がやっていた警備会社のガードマンの仕事を半日でやめた
オーバードーズをして2日眠った
ホームページのファンとSEXをしにいった関東旅行で音楽仲間たちに太ったなと言われた
これから群馬に行ってセックスをすると言ったら報告しろよなと言われたのでいやだと言ったら
友達なら報告する義務があると養老乃瀧で怒鳴られて理解できずにいた
その夜群馬でSEXをしたら3秒位で出た
あとは精神科の薬で眠っているかウルティマオンラインをしていた
田舎で無職であるとちょっとした外出も命取りになる
俺はもうだめだと思い、ゲームの財産を現金に替えるサイトを利用した
25000円になった
俺は25000円を持って東京に向かった
四度目の上京だった
ラッキーなことにこの四度目の上京で俺は詩の世界に足を踏み入れた
それから少しだけ何かがうまくいきかけた。


自由詩 四度目の上京 Copyright 馬野ミキ 2014-07-18 21:20:10
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