ゆりの花、いちじくの実
犬大好き

庭にゆりの花を植えると病人が絶えない
そう教えてくれたのはあなただった。

家長がほいほい死んでしまうから、とも言ってた。
そして笑いながら、赤黒い球根を掘り返した。

秘密を知られている
そう思われるフシがたびたびあった。

あなたがたまに笑うとき、ご飯をつくるとき、
洗濯物をたたみながらためいきをつくとき、

ずいぶん昔にパージした果実が、
地面にぽたと落ちてから、どんなふうについばまれて、腐敗していったのか

あなたの植物でいっぱいの、やけに湿度の高いこの部屋で、
わたしはだまって解剖されていく。

秘密を知られている
そう思われるフシがたびたびあった。

あなたはゆりの花みたいに深く、がっくりと首を折り曲げて、
またひとつ重いためいきをつく。

わたしたちは帰らないひとのことなんてさっさとあきらめて、
いっそグーで殴り合えばよかったのだ。

ふたりがこんな風にだまりこんで、
なにも言い出せなくなる前に。

秘密を知られている
そう思われるフシがたびたびあった。

あなたの植物でいっぱいのこの部屋に、夜はとろとろ横たわり
窓のそとには雨粒が落ちはじめた。

庭のかたすみにひっそりと咲く
ゆりの花にも落ちはじめた。


自由詩 ゆりの花、いちじくの実 Copyright 犬大好き 2014-07-08 23:36:20
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