子供のマーチ
服部 剛

電車を待つ駅のホームで
小さい両手いっぱいに
飴玉をのせ
ほら、とパパに見せる女の子
(夢がたくさんあるんだねぇ…)

改札口を出た脇で
人々の過ぎゆく中に
突っ立って
開いた本とにらめっこの男の子
(君の未来はどんなひと?)

走り出したバスの中から
絵になりそうな風景を、もう一つ
町の何処かに探そうと
流れる車窓の額縁に、目を凝らす

「〇〇商店街」の入口の向こうに
何処までものびる一本道を
黄色い帽子の女の子が
とん、とん、と弾む歩調の喜び

一瞬――窓の景色は過ぎ去り
大人になって久しい僕の
胸の小さいドアへのノックのように
とん、とん、と鳴りやまぬ
あの女の子の、靴の音  







自由詩 子供のマーチ Copyright 服部 剛 2014-06-03 20:09:02縦
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