メメント・モリ (Make No Mistake)
ホロウ・シカエルボク








真理かまやかしか
ずれたまなこでやぶ睨みした
雑草だらけのあけすけな世界
齢だけがひとかどになり
手の中にあるのは
ぎりぎりの蒸し暑い部屋
あちらこちらと
分相応な職を渡り
結果誰とも繋がれず
ちょっとした茶目っ気を
たましいと呼んで虚飾し
おかしな節をつけて叫べば
おかしな節をつけて叫べば
はん
判るやつには判るのさぁ
美味い酒を飲んで
好きな話を喋り倒し
家に帰れば財布はスカスカだ
夜が明ければネクタイで首をくくり
お願いします
頑張りますと
粗末な暮らしに齧りついて
来月はきっと支払えないから
いたるところに電話をかけなくちゃ
はん
あんたいったいなんだい
口先だけがお達者な
ただの落伍者じゃないのかい
馴染めないから特別な
マイノリティな振りをしてるだけじゃないのかい
なぁ
いまのあんたを誰が認めてくれるんだい
穴を開けられない弾には
床に転がることしか出来ないさ
どんな言い訳をしたって
ただの負け犬さ
なあ
覚えておけよ
たましいを語ることが許されるのは
それ相応の名前を手に入れたものだけさ
それ以外は
みんな烏合の衆さ
真摯な気持ちに逃げ込んでんじゃない
猫の額程度の土地に
いくつの種を撒けると思うんだい
そこに生えた粗末な作物は
誰の目に留まると言うんだい
なぁ
あんたここになにを求めてんの
なにを思ってこれに手をつけたの
聞く気はないって言ってんのに
汚ぇ唾飛ばしてんじゃねえぞ
許される場所だけで高く飛べる振りするだけなら
認めてくれるやつの前だけでいっぱしの顔をしたいだけなら
必ずそのツケは回ってくるよ
あんたはまるで兵隊のようだ
弾の飛んでこないところに陣取って
銃を構えてるだけの兵隊のようさ
それでも指は震えるだろう
認めてもらいたいくせに
死と引換えは嫌なんだろうぜ
名誉の戦死だぜ
ひとつ奮発しちゃどうだい
みんなあんたのことを英雄だって言うぜ
勇んで死んだやつにはみんな優しいさ
大丈夫
なにも恐れることなんてないよ
怖いかい
怖いだろう
引鉄なんか引けなくていい
みんな死ぬのは怖いんだ
ことさらに目立つ標的は
いっぺんに吹っ飛ばしてくれるさ
ねぇ
ところで
それって弾は込められてんの
あんたよく構えてるけど
撃つところも下ろすところも見たことがない
まさか
すべてが終わるまで
戦ってる振りだけするつもりなのかい
銃を手にしたんなら
死ぬ気で引鉄を引きなよ
引けないのなら
そこそこの暮らしに戻りなよ
誰もあんたのことを責めたりなんかしないさ
みんなそれを選ぶことで
そこそこの幸せを生きているんだ
早口になるのは臆病だからだろ
性急になるのは臆病だからだろ
果たせない責任なんか背負い込むべきじゃない
ましてやずっと及び腰で居るのなら
迷いの中に居るんだろ
断罪すべきは自分か誰かか
答えを出せずにぐるぐるしてんだろ
だけど
いいかい
選択肢があるのなら
どれかを選ばなきゃ先へは進めないんだぜ
選んだのなら
すべてか無かでやるべきさ
保険をかけるから守って欲しくなるんだ
ほら
新しい日に見たこともないところで
誰かがあんたを値踏みしている
あんたは視線を避けながら
今日一日をなんとかやり過ごすことばかり考えてるんだ
たましいは現実を喰えない
たましいは現実を喰えない
少なくともほとんどのたましいには
現実なんてものは口に合わない
むしろ現実に喰われて
書かれないうちから汚れた用紙のようになることがほとんどだ
余計な思いなんか抱えなきゃ
真白でいることも出来ただろうに
なぁ
考えたことがあるかい
あんたが本当に求めているものがどんなものなのか
なんて
皆目見当もつかないけれど
それがどんな風になろうが
人生はずっと続いて行くんだ
失くしたからって待っちゃくれない
ダイヤに乗って進む列車のように
あんた自身の終点まで続いて行くんだぜ
覚悟を決めたならどちらか決めなよ
このまま乗るか
それとも降りるか
あんたが
ここまで続けてきたことがいったいなんだったのか
考えてみるのはもう少し先でも構わないんじゃないか?












自由詩 メメント・モリ (Make No Mistake) Copyright ホロウ・シカエルボク 2014-06-02 00:03:49
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