小さい靴 —入園の日に—
服部 剛

「かわいい」
保育園の部屋に初めて入った周を
年長の女の子が、迎えてくれた

「じゃあね」
僕と妻はにこやかに手をふって
若い保育士さんに抱っこされたまま
きょとん、とする周をあずけてから
玄関にいって、靴を履く

2年間の必死の育児から
ようやく、ひと息ついた妻が
ふり返った目線の先の、下駄箱に
ま新しい(しゅう)のシールは貼られ

先日、ダウン症の子を育てる
お母さんから贈られた
お古の小さい皮靴が、ふたつ
今日の門出を祝福するように
あたたかい日射しに、照らされていた  







自由詩 小さい靴 —入園の日に— Copyright 服部 剛 2014-04-25 23:37:57
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