Mekakushi
佐藤真夏

子どもだから知らない漢字は飛ばしてもいいんだよ、漢字ドリル斜め折りして目印をつけたページ、「大切な」を十回書き写して、[音読しました]に丸だけつけて、手のひらの外側がすこし黒くなったまま誇らしげに食卓につけば、リビングの明かりがまぶしくて、きれいにしてってだれも言わなかったけど手を洗った。
漢字ドリルひらいて、「切」の順番がくるまで大切なひとって大きいひとのことだと思ってた、大きなやくそく、大きなみらい、順番に知っていって、もう大人だから、何を許すのも自由だし、車を運転できる、きみは来てくれる。
明かりを消してもいいんだよ、降ってくる秒針を胸のうえに並べていく。「切ない」って刀がないってことじゃないのにね、切れ味を試すみたいに伝える手のひらのかたち、きみが私の外側をそっと撫でる。


自由詩 Mekakushi Copyright 佐藤真夏 2014-04-02 23:23:07縦
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