ギャラリーフラスコにてー詩友との再会ー  
服部 剛

時折、詩友達で集う
神楽坂のキイトスのドアを、開いた。
1年ぶりのマコト君が
カウンターで教えてくれた。  

「○○さんが沖縄から来て
 この近所で詩の展示をやってるよ」

   *  

3年前の震災で、放射能を懸念して
沖縄に引っ越した○○さんは
今は無き「詩学」で机を囲んだ頃の仲間なので
急遽、僕はキイトスを出て
ギャラリーフラスコへ、無心で歩いた。  

   *

その白い空間には
幾本もの木柱に
一枚ずつ和紙が貼られ
懐かしい彼の詩が、綴られていた。  

ある詩は、愛妻との日々の密かな呼吸が、聞こえ
ある詩は、中国産のセーターを着て、温まり
ある詩は、日々の場面の調和を、語り

僕はぽそっと、呟いた。
「やっぱり○○さんは、○○さんだねぇ…」

   *  

机に、彼のベストセラーが、置かれていた。
(この本をつくるきっかけは?)と、聞けなかった。

「じゃ、そろそろ…」
3年ぶりの、30分の、再会を果たした僕は
硝子のドアを、開ける、
ふり返る、
自らの中身から、滲み出る笑顔で

「御活躍を」

「御活躍を」

昔、誰かに「兄弟みたいね」と言われた
彼との鏡のような会話で
静かに胸をみたされながら
外に出た僕は、北風をつんざいて
詩友達の集うキイトスの夜へと、歩いた  










自由詩 ギャラリーフラスコにてー詩友との再会ー   Copyright 服部 剛 2014-01-20 23:56:12
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