パスカルの時計
服部 剛

まだ腕時計のない頃
パスカルはいつも左手首に
小さい時計をつけていたという

一枚の額縁の中の、夜
机上のランプに頬を照らされた
パスカルの肖像は
銀の時計をそうっとこちらに見せて、云う

――私には(もう一つの時間とき)がある  

  *  

パスカルの肖像画の前に佇み
吸い込まれそうな彼の(目)と対話するひと時
僕の脳裏に甦る、いつかの場面

今は無い「Le Poet」というCafeで
その夜、隣り合わせた女の一言

――詩人は二度、旅をするのよ 








自由詩 パスカルの時計 Copyright 服部 剛 2013-12-13 20:22:56
notebook Home 戻る  過去 未来