あめさけるてまえにきみがいて
あおば

                     131208


ファシスト消えろの大合唱が耳許にへばり付く
蛙のような声がしてもう限界だと新党結成を決意する
蛙の声は案外遠くまで届くものだと
子どもの頃を思いだす
10年ほど前に蛙の合唱は録音して残しておかねばと
買ったばかりのMD式携帯録音機を片手に畦道を彷徨いた
遠くからは良く聞こえるのにいざ録音しようとするとあんまり迫力がない
なんども通勤帰りに寄り道して訪れた田圃にも
どんどん稲が育ち、いつの間にか蛙の声は消えていた
折角録音したのに、良いところにクルマの走行音が混じったりして
なんか雰囲気がそのままは取り戻せないので
寝る前に耳に付いた蛙の声にはほど遠い騒がしい環境になったのだと落胆したのを思いだす
だから古里を失った蛙たちの合唱が今日も耳について離れない
あめさけるてまえにきみがいて大合唱の指揮を執る
槍でも鉄砲でも持ってこいと勇気を奮い起こすその声が
地球温暖化を阻止してくれるならばそれに越したことはないのですが
二条城に設置された京都府庁に足繁く陳情に通う山本八重のように一発百中の腕前ならばそれなりに効果があるかも知れませんが
訓練不足の新兵達が厄介な旧式銃に手こずっては古参兵に殴られる
あのころカラシニコフ自動小銃があったならばと回想するのは自由ですが
兵器の進歩にも後れを取っていたようでは
勝つことどころか
防衛も難しく
戦うことは絶対に避けねばならないのは自明と思っていたのですが
あのころは鎌首をもたげる蛇の群れに恐れをなして
蛙たちは合唱する勇気もなくなって
呑み込まれるのをうろうろと待ち続けていたようにも見える
世の中には小蛇を食べる蛙もいるのですがと、茶々を入れる隙間もない午後
看病に疲れた手をそっとさしのべてくれる君に厳しく自分を見つめるのです






初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
  タイトル提出は、洗剤イヤ子さん。
  サマーという方が書かれた詩のタイトルよりとのこと。




自由詩 あめさけるてまえにきみがいて Copyright あおば 2013-12-08 19:02:31
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