車窓から見える赤い風船は、まるで祝福のしるしみたいに
あおば

                   131202


仕合わせならばいつでも
一直線に揚がってゆくよ
風のない日は温かいから
誰だって気分が解れる
喩え解れすぎたって
解れたら縫い解れたら縫えばの精神で
一直線に邁進すればよいのさ

真っ直ぐに揚がるのを嫌い
風が吹くのを期待するのは唐変木
欲張りな真っ黄色な葉も重たそう
枝毎に意見が異なるのかどうかも分からない天の邪鬼の集団
ワンコインショップに立ち寄っていきませんかと俄課長
昨日までは少しだけ寄り道をする余裕があったのに今日からは真っ直ぐに帰宅しなければならなくなりました

羽根の生えた天の邪鬼たちが
天女に化けて飛んで行くのが見える午後になると
招き猫の欠伸を合図に
20パーセント引きのシールを貼る
ワンコインショップの隣のスーパーでは
黄金色のご神木が夕日に輝いている
いつまでもあると思うなよの声が聞こえるから
襟を正して帰らなくてはならないと反省するが
来年の干支は午だと知ると
我が世の春を覚えるのだろうか

今は晩秋
早くも冬用タイヤに履き替えた車たちには覚悟が出来ているから
今日はとても温かいのです
だから、ゆっくりと風船は登ってゆけるのです
色は
陽に照らされた黄金色から
やがて本来の真っ赤に変わりますが
驚かないでください
寒くなると赤く色づくのはあたりまえなのですよと
ご託を並べる天の邪鬼を有無を言わさずギューと踏みつけている
仁王様





初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
  タイトルは、星子アヤノさん



自由詩 車窓から見える赤い風船は、まるで祝福のしるしみたいに Copyright あおば 2013-12-03 00:21:48
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