麦酒の味  
服部 剛

週末の仕事を終えて
駆けつけた、朗読会の夜。  

再会の朋と麦酒の入ったグラスを重ね
泡まじりの一口目に「ふうぅ…」と、一息。  

不惑の四〇歳とやらになって間もない朋は  
司会者に呼ばれ、立ちあがり
店内の舞台へ、ゆっくり歩く――  

「オッケー…!!火星人、ちゅーもーーく!」  

決まり文句は
集う皆の日々のしょっぱい涙さえ吹っ飛ばし
おのおのの無数の笑いの細胞は瞬時に、開く  

手のひらで、悲劇を喜劇に転がして
黒縁眼鏡の奥でニヤリと笑ってみせる
詩人の言葉を酒の肴に
眼下のグラスでもこもこ歌い出している
泡と麦酒を、もう一呑み…

頬は火照り
心はほわっと軽くなり
日々の重力よりも、少し優しくなれた気がした  
詩人達の集う不思議な夜  







自由詩 麦酒の味   Copyright 服部 剛 2013-12-01 23:59:07縦
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