夢の卵
服部 剛
近所にもらった卵等を
朱色の
巾着
(
きんちゃく
)
袋に入れて
割れないように気遣いながら
時折かさっこそっと音立てる
卵の歌が聞こえるようで
自分の歌に重なるようで
今日も、智恵子は急ぐのです。
アトリエで無心にいのちを彫っている
夫の許へ
日々の暮らしは貧しくとも
夢だけは、夢だけは、割れぬよう――
今日も、智恵子は急ぐのです。
暮れゆく家路の向こうに、ゆげ昇る
夕の食卓を思い描いて
夢の卵を
懐
(
ふところ
)
に抱いて
自由詩
夢の卵
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服部 剛
2013-11-24 19:25:56縦