裸婦像の声ー高村光太郎展にてー    
服部 剛

鏡の向こうの世界から  
足音も無く  
こちらに歩いてくるひとは  
軽やかにも手をあげて  
今日こんにちは…)と、旅人の僕に云う  

裸婦の姿のその女に  
思わず僕も手をあげて  
ふれることない手と手の間に  
互いの(今日は…)は、木霊こだまする  

智恵子像の両目の  
黒い小さな暗がりは  
黙ったままに微笑を秘めて  
(生の歓び――)を  
無言で僕に、囁いた  





  


自由詩 裸婦像の声ー高村光太郎展にてー     Copyright 服部 剛 2013-11-23 19:37:47
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