8
きるぷ

むかし、
最初の言葉が毀れたとき
つまりひとりの身におとずれるさまざまな死の
最初の一日に触れたときに
その裂け目から吹く風を迎えすぎたのだろうか

あるいはまだ
ふさがっていなかったのだろうか

あの子のくちびるに
なりそこねた言葉か
あるいは堕落したひかりが
落下したあのときは

沈黙と沈黙のあいだを
飛び石でも踏むようにして進むぼくは
笑われでもしたような気分だった
リズムの取り方が下手だと言って



迂回せず
先からわかりきった方角に向けて
軽やかに歩みだし消えていった
そのしなやかな指先は
帰り道を確認しない潔さをもっていた

時々思い出す
あの子のことを

静かな夏の日に見た
木陰の
積極的に実体性を主張する
深い影の印象とともに

むかし
最初の言葉が毀れたとき
聞いたのかもしれない風の音とともに


自由詩 8 Copyright きるぷ 2013-11-15 08:13:53
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