沼に立つ
因子

沼に立つ
沼のふちに立つ
黒ぐろとした水の
その下に何があるのか
考えたり考えなかったりしながら
今まで生きてきた
たった今も
これからもたぶん

時々手を差し入れる
私を決して拒絶しない
生ぬるい暗い水の中から
洗濯機から出したばかりみたいに
ずるずると生乾きの言葉たちが
よじれ連なり
私の手を汚しながら
悲しい顔をして

私はそうして
私の記憶を創造し
私の物語を創造する
そうして生きてきた
たった今も
これからもたぶん


自由詩 沼に立つ Copyright 因子 2013-11-10 18:51:05
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