無人駅にて  
服部 剛

今はもう(夢の時間)になった、十代の頃。  
ほんとうの道を、求めていた。  
敷かれたレールを、嫌がった。  

思えばずいぶん、つまづいた。  
人並に苦汁を飲み、辛酸も舐めた。  

今、旅の途上の無人駅に立ち  
風に吹かれている僕の  
背後に伸のびゆくレールには  
遠いもやに吸いこまれ 
愛の砕けたあの夏の場面さえ  
おぼろなひかりを帯びている  

長いレールの傍らに  
たどたどしくもひとすじに現在地まで     
続いてる、長い、黒い、足跡の連なりよ――  

あの頃よりは少々大人になった  
旅人の僕はもう一度、これからのレールがのびゆく
遥かな駅の方向へ、瞳を向ける。  


靄が、晴れてきた。  







自由詩 無人駅にて   Copyright 服部 剛 2013-11-06 23:09:47縦
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