風の手紙
服部 剛

追分の池の周りの  
畦道は  
木漏れ日の光と影が交差して  
晩夏の蝉は  
静かにじぃ…と経を詠む  

くっきりと膨らむ雲は
絵画の空を、東へ移ろい  
池の向こうの緑の木々も    
風の行方に身をかしげ  
私の目の前を埋め尽くす  
背丈の高い草群は  
わらわらめらめら揺らめいて  

――この世界の交響曲を、指揮する者は
  追分の空の何処かに

そんな予感を
葉擦れの囁きに聴きながら  
ベンチへ腰かけた、私の膝の木漏れ日に  
枯葉の手紙が一枚、落ちてきた  

私はそれをしおりにして  
誰かと交わす約束のように  
そっと「美しい村」の頁に挟んだ  




自由詩 風の手紙 Copyright 服部 剛 2013-09-10 21:08:15
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