林 檎 予 報
松岡宮

本屋に檸檬爆弾を置くひとを見たので
わたしは明日 駅に林檎爆弾を置くことにした
花かごいっぱいに詰め込んだ林檎を
駅のどこかでばら撒きますよ
という
林檎予報

 ラッシュの時刻に群舞する駅員たち
 指先が風を切るウェーブに乗せて
 ころがす林檎
 ふくらむ林檎
 駅員の目に刺したい赤は生きているものの赤い色でした

  生まれたての林檎
  初収穫の林檎
  陳列される林檎
  安売りの林檎
  しおれる林檎
  虫のついた林檎
  さびしい林檎
  食べられるのを待っているだけの林檎

駅員はどんな顔をするだろう
ベンチの上に転がる林檎
赤い色に刺された駅員がそっと触れる肉
白い手袋がそっと触れる肉
それは家で林檎を扱うようにではなく
 ・・・・あぶないッ!
 ・・・・汁まで 出てきやがった!
林檎爆弾として
林檎爆弾として
慎重に 慎重に 触れようとする

ねじれの位置に歩き出す駅員と私を繋ぐものは
赤いひとつの球体でした

わたしは明日 駅に林檎爆弾を置くことにした 
生きているものの赤い色がどんな軌跡を描いて消滅するのか
遠くから 
見ている


自由詩 林 檎 予 報 Copyright 松岡宮 2013-08-27 22:38:06
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