スウィート・デビル・テイル/エイリアン
茶殻

殺し屋の看板は下ろしました
ついに一件の依頼も来なかったけど
前科者の看板は外せないしね

ロンドンの中央を走るバスに貼り付く
いくつものガムを剥がして
ぼくは本当に会いたいものにだけ会いたいと願う

風の噂の始まりは
38度5分の熱にうなされる少年の夢の中
スウィート・デビル・テイル

何度枕を裏返しても奴はいない
閉じたまぶたを横切っていく天使の羽に
闇の国も住めば都なのかと問う舌は痺れて

図書館を喫茶店に様変わりさせるような
ジャズ・ミュージックばかり聴いてみても
ぼくの最低限のワードは心に潜む、三つ子の魂百まで

説明過多の春よ
青くにおう風も幼い嬌声もアウターの彩色も微炭酸の光も
春なんだよ、簡素な、それでいて多弁な、金太郎飴の春だよ

少し早く生まれた彼は次の職を探すぼくを面接する
彼は知る、火曜日と金曜日、
恋に生きるJohn Doeでいたがっているぼくを

無意味をかたる諸々の事象が意味を求めているはずなどない
手首を切るのが先か、クスリが切れるのが先か、額の中の少女は
プラグマティストが酩酊の果てに描く神のポートレートか

民間の宇宙船に飛び込んで
UFOを探したいのさ、本当にぼくは何も知らないけれど
閉じ込められるより放り出される方が孤独だよ、きっと

夢の中で呼吸をしていたかはいつも定かでない
パスタが茹だるまでぼくは本当に呼吸をしていたのか
思春期の煙草にくれる気持ちが少しわかる懐郷のモーメント

“救われるべき手のひらが
祈りのために閉じられてしまうなら
僕はその手を解き、握りしめるだけだ”

深海からおもむろに顔を出したことばは眼球が飛び出ていて
そいつはまさに絶望的に悪魔だ、
春が本当に似合わないったらないね


自由詩 スウィート・デビル・テイル/エイリアン Copyright 茶殻 2013-07-18 03:24:19
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