朝の声援
服部 剛
朝、カーテンを開いたら
眼下に広がる野原に幾千人のブタクサが
黄色い房の身を揺らし皆で何かを言っている。
物書きを志す
故
(
ゆえ
)
に
家族に慎ましい日々を送らせてしまっている
痩せっぽちな主の僕の傍らに立ち、妻は言う。
「ほら、草々もあんなに
声援を贈ってくれているじゃない」
カーテンを閉め、背を向けて
(よっしゃ!)と心に気を入れて
一歳の周の寝顔をじっと…見てから
玄関のドアを開き、車の助手席に乗る。
妻の運転する車は、僕を乗せて
風に
靡
(
なび
)
いたブタクサ達の
合唱を背後に
今日の糧を得るべく現場へまっしぐら――
一本道を走っていった
自由詩
朝の声援
Copyright
服部 剛
2013-06-24 20:51:13縦