さだめらしき願いを ひとつ知りました
六月の
嵐にひかえる空は
細心のあやうい平衡と ためらいに似た心地なさを 具う
見あげれば
流れは岩にわかれ
我とはなしに 落ちる水は、龍のようです
右には巨きな栗の木と あとは、
まわりはすべて 新緑のもみじ
名も知らぬ花の亡骸
水辺の岩と かしこまる生鮮の水苔を白くそめている
森に、人が心をいやすのは
生きとし生けるものを育む 森の願いがあるからなのですね
清流の柵の向こうに
娘がふりかえった
襟元がすずしげな
白地にぼたんの浴衣に 無地の団扇
昔 森と聞いた記憶は、つぼみを解き
高原から千里をながめる娘の、
「「 あれが安多多羅山
あの光るのが、阿武隈川
昔読んだ 詩のまま
国民宿舎から少し歩くと、夏でもリフトに乗ることができたの
知ることのない 女のすがたを
父となる人は、白黒の写真にライカでおさめた
「「 この小川は、話してくれた烏川ににています
母と連れ立って久し振りにあるく
二十二歳
若かりし娘すがたの母は、浴衣の白が緑に映えて
美しい