抹茶アイスと滝
あおば

            130603


突然
滝とはなんですか
滝とは
あの水が滔々と流れ落ちる瀑布のことですか
流れる汗をかきながら抹茶アイスで滝を見ながらひと休み
てらてらと光り輝く抹茶のような
初夏の木々を愛でながら
足の火照りを
冷まし
ます
蒸されて萎びた君は
乾かされ
その挙げ句
石臼でグルグルと轢かれ
悲鳴をあげている
その苦しそうな
声が聞こえます
残酷な趣味だと
名もない花も
口を合わせて
(その丸い筒状のガラスのセルには
新製品のサンプルが入っている)
非難する声が
山道に瀰漫して
規制緩和過剰だと
言いたそう
二時間早めると
金融センターへの道が近付き
もっともっと便利になります
二四時間歩き続けられますと
新製品のコピーは
疲れ切った身体を
横にして
抹茶アイスを嗜む余裕はありませんと
言を濁し
多くを語らないが
一斉に
拍手が湧いたから
世界中の誰にでも召し上がれますとも言いたそう
抹茶を嗜しまない君は
それを耳にするだけで
辛そうな顔をする
熱湯を注がれ
滝壺で攪拌されて
くたくたになって
運良く浮かび上がっても
そこにゆっくり止まることも許されず
身体の芯まで冷やされたまま
すぐさま喉の奥から下流に流されるのだ
法人税を払うのはいやという君にはうってつけの飲み物だと
僕が冷やかすと
二〇年後にはこの辺りにも地下鉄が走るから
それを見越して土地買い占めを考えて居られるのでしょうと
品の良い年配の女性が微笑見ながら近寄ってきては
新製品の抹茶を勧めてくれた
一気に試飲しながら
嫌でも二〇年後を考えざるを得ない心境となるが
二四時間休み無く動いている二〇年後のこの辺りの光景がなかなか想像できなくなっている
レーザーポインターで工事中の作業員の目を照射しないでくださいの看板を無視して
争って照射したがる人達の革新的な顔を見ながら
時間だから
そろそろ出かけなければと
やおら立ち上がり
次のメルクマークはと
キョロキョロしながら
途惑いながらも
歩き始める






初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/




自由詩 抹茶アイスと滝 Copyright あおば 2013-06-04 01:24:56
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