天使は川辺にて
あおば

                    130528



大使は
河辺駅で
降りた
突然の雨に慌てる随行する大使館員たちを無視するかのように
電車は走っていった
彼等は濡れるのに任せて
北側に拡がる文化住宅に向かった
それは凡そ55年前
まだJRが省線と呼ばれることもあった時代で
まだチョコレート色の電車が似合う頃のことで
既に文化住宅は10万円では建たなかったが
ガラス窓の中には電気炊飯器が得意然と置かれていた
ピカピカに磨かれた理性のようだった
しみったれた愉快な集団が誰も彼もを追い抜いてゆき
天使を人さらいのように拐かし
得意になっていた頃だ
川辺には狐も住んでいて
文化住宅は天使が住むには狭すぎると
誰もが感じだす少し前だったかも知れない






河辺駅 東日本旅客鉄道(JR東日本)青梅線の駅

   初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
  タイトルは、ナナ・クマスキーさん



自由詩 天使は川辺にて Copyright あおば 2013-05-28 11:46:35
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