昭和ノート
あおば

              130514



昭和へのミニトリップに使うんだから
お客様を乗せられる
程度の良い
小型のオート三輪を調達して下さい
営業部長の指示の下
程度の良い三輪車を探したが
程度の良いのは既にマニアの元にあり
おいそれとは譲ってくれません
大金を積めば可能かも知れませんが
不良在庫を恐れる経営陣の了解を得るのは難しく
リースを活用せざるを得ません
確かに
マニアが貸してくれる可能性もありますが、
運転をこちらに任せてもらえるかは分かりません

しからば何しにミニトリップするかというと
ただ懐かしい生まれ育った時代に舞い戻り
ノスタルジィーに浸るためだけではありません
言い古された言葉ですが
「温故知新」古きを温めて今を甦らせるのさ
昔の上司も口癖のように言っておられた
君のように現実に束縛されてせこいことばかり考えていると
いつの間にか時代に取り残されてスクラップにされてしまうかも知れません
だから、
古くさいけど使い易い
再生式の並四ラジオを携えてオート三輪を探しに行きましょう
キャッチコピーはできたけど、肝腎の三輪車が見つからない
三輪車を求む、格安で故障知らずで燃費も音も良い
もちろん外観も良くなくてはいけません
というわけで、なかなか手頃のが見つからないのです
昔はどこにでも走っていたんですけれど
誰も投資の対象とは考えず、どんどんスクラップにされて
今では宝物のようになっている
風が吹くと桶屋が儲かるとは江戸時代の諺ですが・・、
誰も流行している時はそう思わないんですねと
耳許で九官鳥が囀った





初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
  タイトルは、るるりらさん




自由詩 昭和ノート Copyright あおば 2013-05-14 23:48:20
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