いのちのおむすび 
服部 剛

(死にたい)と思った青年が 
ずぼり…ずぼり…とふらつく雪道で 
北風の吹くままに入った 
イスキアの家で 
「どうぞ」と置かれた 
初女さんの握るあたたかい 
おむすびを食べた後、ほっ…として 
誰にも言えぬ闇の心を、呟いた。   
初女さんはただ静かに、頷いた。 

イスキアの家を出た後、青年は   
(死にたい)気持が、煙となり 
果てない雪の地平につらなる足跡刻み 
すでにゆっくり歩み出す、自分を知った。 

雪原に、しろい吐息は熱く消え 
自らの脈打つ音を、聴きながら 
ずぼりずぼり、と彼は往く―― 








自由詩 いのちのおむすび  Copyright 服部 剛 2013-05-11 23:54:21縦
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