夢の絵 
服部 剛

ごろごろ、ぴか、どかーん 

遂に熱血上司の雷が、頭上に落ちた。 
焼け焦げた姿のまま、そろ…そろり 
逃げ帰ろうと思ったが 
見えない糸に背中を引かれ 
くるり、と引き返す。 

熱血上司の顔が鬼瓦になっている  
畳の部屋に戻り、互いに坐り 
少しの間、腹を割った。 

家に帰って、嫁さんの前で 
両手を皿にしてめそめそのふりをしつつ
仕事というものの重さを思い 
布団に小さく包まって、寝た。 

夢の中では 
怒った上司とちびった俺の場面が 
全て二重の線で描かれ 
少しぼやけた絵になり 
一枚の額縁に納まり  
誰もいない美術館の壁に、掛かっていた。 

(そうだ、出来事は皆一重の線じゃない…) 

目が覚める。 
網戸の外の夜明けはすでに 
蝉等がかなかな歌ってる 

布団の上で、のびをする。 
両手の拳をエイとあげる。 

顔を洗い、飯を喰らって、外へ出る。 

今日という日の出来事の 
上辺の全てをひっぺがす 
あの夢の絵を、視る為に。 








自由詩 夢の絵  Copyright 服部 剛 2013-05-03 18:53:50縦
notebook Home 戻る  過去 未来