失神女王に蜂蜜を
松岡宮

冬に戻ったような夕暮れのベランダ 女王蜂が失神していた

まっすぐ伸びた長い羽
カンロキャンディー膨らむ腹部 
細いくびれを見せながら
あおむけに横たう女王蜂

その小さな唇に蜂蜜を飲ませよう
いつかわたしがあなたの仲間から奪った蜜をわたしがいまあなたに戻そう

わたしの唇が女王蜂の唇に蜂蜜をなすりつけると
彼女はわずかに意識を取り戻し
まず ふたつの触角がわたしの唇をつつんだ
左右非対称のぎこちない動き

見えますか
これは恋を綴った手紙の文字で
聴こえますか
これは甘いギターのアルペジオ

女王蜂はその液体が好物であることに気づくと
わたしの唇から糸を引くように蜂蜜を奪い取った
そして幼い頃に彼女の母親がやっていたように
蜂蜜を毛糸玉のように丸めはじめた
風 さわさわ
やがて正気を得た女王蜂は人間がいることに突然気づき
細い二枚の羽を斜めに立て
威嚇を 始めた

http://d.hatena.ne.jp/miya_ma/20130413


自由詩 失神女王に蜂蜜を Copyright 松岡宮 2013-04-15 22:26:23
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