渋谷の公衆便所にて 
服部 剛

渋谷の公衆便所に入ったら 
「ほらおとっつぁん、チャックを閉めて」と 
初老の息子は傾く体の親父を支えて、言った。 

なんとか息子に支えられ 
よたつく親父の背中には 
(いたる)と3文字、縫われており 

親父の名前が(いたる)なのか? 
かれらの歩みは一体何処に(いたる)のか? 

人の情けのいたる場所について 
あれこれ考えながら 
「友愛のモヤイ像」を横切り 
僕は雑踏を 
何処までも歩いていった 








自由詩 渋谷の公衆便所にて  Copyright 服部 剛 2013-03-22 20:44:17
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