誰が食わせてやってるんだ式
salco

女というものは
化粧を落とした顔がすっかり輪郭を失っている
写真の中では既に
枯れ傷んだ花弁のように色褪せて
寝室の鏡に映る素顔は男の目に見せられない

女というものは
安物スーツにハイヒールでオス孔雀さながら歩き回り
背が高いと言われれば、したり顔で大満足だ
書類をバサバサ持ち歩き、真っ暗な部屋へ帰ると
ロウティーンの馬鹿げた夢すら失った自分の為に悶え苦しむ

女というものは
TVニュースに寸評を加え、第5次中東戦争や独裁政権の動向や
超大国の軍備拡張について人道的な私見を長々述べ立てる
戦争の無益を滔々とまくし立てながら
軍靴を履いて胸まで泥沼に浸かり、機銃を頭上に掲げて
体じゅうをヒルやシラミにたかられる義務は生涯負う事もない

唯一の懸念は
「私の坊や、私の坊やはどこ?」と叫ぶ
戦後の被害者になる事だけ
政治が戦争の主犯であると知っていながら
「あしたのおこめはどうするの?」
その最たる従犯である母親の役割については露ほども
瓶底に残った化粧乳液ほども考えない


そこで我々国たみなる人頭税納付者も
発想の転換を図ろうではないか
これからの時代は女を
男の代りに戦場へ送り出すのだ
兵士こそは戦争を最も熟知する消耗品だ
戦争のバックグラウンドが敵国でも議事堂でもなく
懐かしい故郷の町にこそ在るのだという事すら
女達は知らないのだ
少なくとも有史以来、身を以って

黒衣の女達は長年
服喪の被害者づらをして来たが
塹壕や墓穴に冷たく横たわる
四肢や腸のちぎれた軍服の屍こそが被害者だという
事実の代弁者とは決してなり得なかった
亭主の呻きや倅の悲鳴を聞きながら一度として
クーデターも組織せず、テロさえ起こさず
「あたしのおめこはどうするの?」
女の無力に胡座をかいて、疲れた顔で窓辺に座り
無益な涙を流してばかりいた

だから女を戦場に行かせたら
世界はずいぶん変わるに違いない
母性の疼きの共通理解に基づいて
前線がダレると政治屋達が懸念するなら
それはとんだ買いかぶりというものだ
戦果はもっと速やかな、素晴らしいものとなるだろう
我が子 を守る為
女がどれほど攻撃性を獰猛に発揮するか考えるがいい
それはかつての、今日までの青年達の
いわゆる「我が父母」「我が兄弟」
「我が郷土」「我が国土」式愛国心の悲壮より
数段深度の確かな盲目的モチベーションとなる


女達は
根絶やしの殺意を血まなこに
顔面や胸よりも、腹を狙い撃ち合うだろう
母の愛ほど偉大な力がこの世にあろうか!
膂力だけのウスノロ
ロマンティストの青年達よりも
彼女らの動物的な愛情がどれほど果敢で凶暴な力を
いかんなく発揮する事か
母こそは我が子の為なら嘘も盗みも厭わない
乞食だろうと売淫だろうと
殺人だろうと躊躇しない
命さえ喜んで捨てる自己犠牲の権化ではないか

女達は
保育施設に子を預けて戦場へ赴く
子はみな政府の監視下に置かれ
人質に取られた各自の至宝の為に
めざましい戦果を上げるに違いない
 前進は我が子との再会を意味する
 戦死は名誉孤児の生活と高等教育を保証する
 後退すれば我が子を国家の手で弄り殺される
この状況で誰がめそめそ泣こうか
シェルショックに震える腑抜けでいられようか
今こそ腹を痛めた命の為に身を挺し
その生存の為だけに前進し続けるだろう
躊躇も疑念も入る余地の無い動機の為に

メス犬こそは最も戦闘的なのだ!
この勇敢で盲目的な戦闘員
女どもを陸軍へ!


自由詩 誰が食わせてやってるんだ式 Copyright salco 2013-03-22 00:16:45
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