椅子を抱く車掌
松岡宮

久しぶりに京浜東北線に乗った
有楽町 新橋 浜松町 そして田町
だんだんと混雑してゆく乗客のかたまりを車掌が押し込み
包丁振り上げドア閉める
ダ ン !
た た た
重たげに滑り出す銀青の車体
たたん
たたん
ヨシッ
コートを着た小柄な車掌が遠ざかる田町の駅を指さすと
にぎやかなビルの灯りたちが返事をする
車掌さん車掌さんって
青や黄色の光を揺らしている
ヨシッ
そして車掌は突然椅子を抱きしめた
高い運転台にある椅子の背もたれを
後ろから抱きしめた
青く柔らかい背もたれが車掌の形にへこんだ
いま
通勤ラッシュの乗客を守るのは
椅子を抱く車掌
田町から品川までの3分間
わたしはぎゅうぎゅうにつぶされていたが
車掌はずっと椅子を抱きしめていた
そうしている間は何も悪いことは起きないと
そう 
信じているかのように


自由詩 椅子を抱く車掌 Copyright 松岡宮 2013-03-04 00:49:49
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