薄緑のバタフライナイフ
よしたか



なくしたものは薄緑のバタフライナイフ
あぁ 探しまわった
しけたポテトチップを延々噛むみたいに

どうしようもない孤独をわかったうえでの花畑だったんだ

銀杏の木を不透明な骸骨たちがゆすぶって
泣きわめく若葉が笑いながら落ちてくる
ピストル自殺した聖衣をまとった泥棒
花屋の前で花屋という花の香りを嗅いだ
地球のリビドーってなんなんだろう
俺は影法師の第2ボタンをひきちぎった
君はそれを愛だといって
あなたはそれを憎しみだという
みんな言いたいことはあるだろうけど
一斉に喋るから「人間!」としか聞こえない

一度だけ
また隠れんぼうの共犯者たちが
一点集中のビート進行ですべてのHitoshizukuになるよう
強く弱さを美しく醜さを見つめあえたら
薄緑のバタフライナイフがきまるでしょう
さっくりと1000の小鳥のさえずりを切りひらいて
みずみずしい化石をその手につかんだら
古めかしい未来人が喜んでくれる

毒に癒され薬に毒され
彼女は鏡に現実によく似た夢を見た

柄は深い森のタナトス
形状は入道雲を故人と思い込んだ人の眼帯
切っ先はドブから大切なことを探す人の指先
贈り物にどうですか
死後硬直からの産声はどうですか


硝煙の匂いがするベビーパウダーで浅く飛ぶんだ
琥珀色の感傷が膿んだら
待ちぼうけした最愛がイカロスを設計し始める
薄緑のバタフライナイフの行方を

銀杏の木を不透明の骸骨たちがゆすぶって

泣きわめく若葉が笑いながら落ちてくる

俺は影法師の第2ボタンをひきちぎった

君はそれを愛だといって

あなたはそれを憎しみだといって

一斉に喋るから「人間!」としか聞こえない

絶息の野を歩くくたびれたフリルの社会人

どうしようもない空き地をわかったうえでの花畑で

鏡に誰かの夢のような現実を見るけど

極論と正論から弾かれた手垢がなんとなく舞い降りるね




自由詩 薄緑のバタフライナイフ Copyright よしたか 2013-03-03 02:00:01
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