三番目の月
そらの珊瑚

終息に
ともなう安堵
かすかな
心残りを秘めて
三月が来る

中原中也賞を受賞した或る詩集を読む
悲しいことに心が揺れない
この詩集の良さは
三月が来ようとも
きっとわたしにはわからない
わたしにだけわからない
いうなれば
弥生の霞のなかにいるように
いつかそれが晴れる日が来るのだろうか

ああ あれは山が息をしているのです
鉄塔に棲む烏が教えてくれました
七つの子は巣立ち
故郷のことを忘れてしまいました
それでも同じ言葉で啼いています
それだけでいいのです


永遠に心離れたままの隣人のよう
存在に手に触れることはできるのだが
魂に触れることはできない
それはただの
綴じられた温度のない紙の集まり
オブジェをしては充分に美しい

諦めに
ともなう安堵
わかると思いたかった
けれど
わたしはわかると言わないし
ここでは社交辞令など要らない
ましてや
三番目の月には通訳は棲んでいない

悲しいことに心は揺れない


自由詩 三番目の月 Copyright そらの珊瑚 2013-03-01 09:12:25
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