二0一二年九月のある日、早朝の都市間バスに乗って僕は・・・
Lucy


僕は何もかも言い尽くした
それでいてどんな言葉も
からっぽなんだということに
気づいてしまった人の様な気分で
さらに 新しい言葉を
青黒く汚れた綿を繋いだ空に
探していた

神様 僕に投げてください
うわすべりの飾りじゃない
この胸にどしんと届く言葉のボールを
それを受け取るためになら
どんな辛い目にあってもいい

雨は斜めに窓を叩き
雲にからみつかれた山は
嘘つきの僕の不安を吸い込んでいる

街はぐしょぬれ
雨で台無し
黄色い重機が並ぶけど
護岸工事は中断されて
イタドリの葉は洪水の予感に揺れている
昨日の記憶は埋め立てられ
二度と数えられないだろう

だけど当面
僕らは無事だ 少なくとも
このバスに乗っている間は

たぶん歴史に刻まれる
無惨な時代の一ページに
ブックマーカーのように挟まれ
僕らは信じられないくらい無頓着で
あり得ない程に呑気で

バスは走る
この降り続く雨の中
行き着く都市(まち)があるかのように
降り立つ場所が
朝日を避けてカーテンを閉め
まどろんでいる乗客たちを
どこかで待っているかのように・・・



自由詩 二0一二年九月のある日、早朝の都市間バスに乗って僕は・・・ Copyright Lucy 2013-02-27 20:06:04
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