数cmフユウ
komasen333


在来線から私鉄へ
  乗り換えるために
    長い、長いコンコースを歩いていく

よそ見してると
 すぐに人とぶつかりそう
さすが日曜日
 老若男女がゴチャゴチャ

色んな看板
 色んな表情
  ついつい目移り
ふと
 右斜め前から歩いてくる
 男性か女性か判別しにくい人を見て
 目が、点となった

疲れてるのかと思い
マンガの主人公みたく
目をゴシゴシと手の甲でこするが
どう見ても 見間違いではなさそうだ

「あの〜
 浮いてますよ」
気づいたら、反射的に声をかけていた

「ああ」
気の抜けた声を聞いても
男性か女性かはっきりとわからない

「大丈夫なんですか?
 よくわかんないですけど、
 こんな人混みで浮かんでいたら・・・」
できるだけ
小さな声で問いかけると

「ああ。
 あなたみたいに
 浮いてるって気づく人は
 めったにいないから」

そう微笑んで
「お気遣いありがとう」と
その人は立ち去っていった。
じゃなくて、浮かび去っていった。


自由詩 数cmフユウ Copyright komasen333 2013-02-20 10:38:18
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