内陸
アオゾラ誤爆

海であったかもしれない、その水たまりを、誰かは容易
に跳び越えてしまう。とめどなく溢れながらこぼれなが
ら変遷していく歴史だったかもしれない、それが映す風
景の色味について、語ることもなく。

模型の中で迷子になる。白地図。砂漠のようになめらか
な凸凹の住宅街には、図鑑で見知った動物たちの、無数
の足跡が埋もれている。ぴかぴかしているコンクリート
を敷き詰めたのはきっと神様で、その下に眠る僕たちの
骨は次の世界の栄養になるだろう。ねえ、近道をさがし
て。練り歩いた夢の裏側へ案内されてみたい。

ここはまだ陸地、声が聞こえている。

この愛しい言葉たちをまだ知らなかった頃、幾つもの物
語に生きていたような気がする。巡り会えない人々との
約束を胸に抱きながら。星霜、潮風にさらされて、痩せ
ほそった舟の上で揺られながら。

横断歩道の、有機的な香り。ぶ厚い本の内側までは逢い
にいけない代わりに、今ここで立ちどまってみる。光り
は暮れていき、暗やみは育つ。それでも鮮やかな言葉の
波が、瞼に打ち寄せ、ひびいている。


自由詩 内陸 Copyright アオゾラ誤爆 2013-02-08 02:47:58
notebook Home 戻る  過去 未来