課題「望」:喜望峰  〜〜20130126
木原東子

喜望峰なら何度も通った
あの岬までともかく行けば
回った先には
ひとつの道があると聞いた
懸命に漕いださ

まだ何も見えないが
すでに良い海路を進んでいるんだ
きっと空も晴れるさ
波は凪いで魚も釣れる
絶望しないできた甲斐があった

ねえ、そうだよね

あ、どうしてそんな馬鹿をするの
そっちに舵を切ってはいけない
またやり直し

この高波で立ち上がってはいけないのに
海の水、飲んだらだめだよ
またやり直し

何度喜望峰を通りかかっても
座礁する難破する沈没する呑み込まれる
黄金のジパングなんか無いんじゃない?
喜望峰を回ったってくり返されるだけの
失望

高望みは止めた方がいい
そうだ
待ってよ
何故追いかけるよりよい満足を
満足はここにもあるし

もっと不幸せな人がいるだろう
パンを分け合って
そこそこで暮らそうじゃない!
そこそこで

戻る
戻るんだ
そっちの方が安全だ、ねえ、とうちゃん


自由詩 課題「望」:喜望峰  〜〜20130126 Copyright 木原東子 2013-01-26 18:00:56
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