階段昇降の詩 
服部 剛

だらりと垂れ下がった両足の 
Sさんが住む団地のドアを 
「おはようございます」と開けてから 
僕と同僚で、車椅子の前後を支え 
(重たい・・・)と心に呟きつつ 
がたん、がたん、と階段を下る 

施設の食事を終えた後 
トイレ介助で僕がからだを抱え 
便器に座る時 
「最近、妻も息子も冷たくてねぇ・・・
 去年はそこらを歩いてたのに 
 今は粗大ごみになっちゃった    」 

(重たい・・・)と心に呟き 
Sさんを支える 
怠けた僕は、間違っていた 

施設での一日を終えて 
帰りのドアへ向かう階段を 
僕と同僚で 
がたん、がたん、と引き上げる時 
踏ん張る足裏に何故か力がみなぎった 

両足をだらりと垂らし 
うなだれる 
Sさんの哀しみを知った日 








自由詩 階段昇降の詩  Copyright 服部 剛 2012-12-18 18:44:20縦
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