花に囲まれて
Tシャツ

 象にはお墓がある。すごいなって思うけど、それは象がつくるんじゃなくて、死期を悟るとみんな同じ場所にやってくるんだって。だからお墓って言うよりも、死に場所だなって僕は思う。ヒトはお墓を作る。僕は無宗教で神様も仏様も信じない。だって、もしいるんならあの子をこの子を死なせてしまった意味がわからない。病気やミサイルや爆弾や。神様なんて人間の都合のいいつくりもの。でももしいたとしても、何も変わらないって思う。神様は全知全能で愛に溢れている。だから病気の原因のウィルスも愛してる。人を殺す爆弾を落とす人も愛している。何でもかんでも愛してしまう。…いてもいなくても同じかなって思う。もし僕が神様なら、みんなを愛しているから、何もできなくて、頭がおかしくなってしまうって思う。
 ヒトの最初のお墓が見つかったって話を昔何かの記事で読んだ。初めてのヒトのお墓。どんなお墓だろうって思うと、その人は両手両足を曲げて地中に埋まっていたという。どうしてそれだけでお墓って言えるんだろうって少し思う。僕のお墓のイメージは、墓石があって名前が彫ってあってとか、そんな感じ。何故お墓かっていうのはすぐに分かった。彼の周りからお花が置いてあった痕跡が見つかった。彼等は現在のヒトに比べればまだまだ脳の容量が小さかった。彼は病気か何かで亡くなった後、家族や仲間が集めてきた花に囲まれて埋葬されたのだろう。って思う。ちっぽけなお墓だけど。僕は想像すると胸がいっぱいになる。お猿さんみたいなヒト達は泣いたのかな?悲しかったんだろうな。って思う。僕が大人になって死んだら、黒と白の幕がひかれて、喪中って言葉が飛び交って、香典のお札を数えて、よく知らない人がやってきて。大きな車で運ばれていく。
 きっと昔の彼等は、彼が死んだ事を理解し、悲しみにくれたんだ。そして、そんな彼に何かをしてあげたかったんだ。そうして小さいけど綺麗な花を彼と一緒に土に埋めたんだって思う。僕はお葬式なんかされたくないなって思う。たいした僕じゃないけど、僕の死を行事にして欲しくないって思う。無宗教の僕には坊さんの念仏がうるさく聞こえる。出来れば、そう、昔の彼等のように、小さな花でいいから僕と一緒に、僕の大事な人たちが知っている、ひっそりとした場所に埋めて欲しい。僕は死んでしまった彼の気持ちになる。僕は死んじゃったけど。みんなが集めてくれた花に囲まれて、とっても嬉しいよ。


散文(批評随筆小説等) 花に囲まれて Copyright Tシャツ 2004-12-19 23:43:22
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